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前橋地方裁判所 昭和35年(わ)285号 判決

被告人 新保重雄

大三・五・一七生 無職

主文

被告人を懲役六月に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和三五年一一月二〇日施行の衆議院議員選挙に際し、同年一〇月三〇日、群馬県第一区から立候補した金子重平の選挙運働者であつたところ、同候補者に当選を得させる目的のもとに、

第一、(一) 同候補者の運動者牛久保弥平と共謀の上、右候補者の立候補届出前である同年一〇月一五日、前橋市北曲輪町七三番地北曲輪町公民館において、右選挙の選挙人である中村銀次郎、丸田真一郎、浜井寿夫、田辺広一、小畑重吉、生井駒雄および住谷伝治に対し、同候補者のため投票並に投票取まとめ方の選挙運動を依頼し、その報酬等として夫々清酒二合瓶詰一本、ハム折詰一箱並に生菓子五個入包み(一人あたり時価合計二五〇円位相当)を各供与し、

(二) 右候補者の選挙運動者でありかつ選挙人である石川徳次郎に対し右候補者の立候補届出前であるにも拘らず、同候補者のために投票並に投票取まとめ方の選挙運動を依頼し、いずれもその報酬等として、意思を継続して、

(1)  同年九月二五日頃、同市堀川町六五番地附近道路上において現金一、〇〇〇円を、

(2)  同月三〇日頃、同市前代田町三九の一番地附近道路上において現金一、〇〇〇円を、

(3)  同年一〇月三日頃、同市堀川町六五番地附近道路上において、現金一、〇〇〇円を、

(4)  同月五日頃、前同所附近において、現金一、〇〇〇円を、

(5)  同月一〇日頃、同市立川町六番地附近道路上において、現金二、〇〇〇円を、

(6)  同月一五日頃、前同所附近において、現金五〇〇〇円を、

(7)  同月二〇日頃、同市前代田町四五番地附近道路上において、現金三〇〇円を、

(8)  同月二三日頃、同市立川町八番地附近道路上において、現金一、〇〇〇円を、

(9)  同月二五日頃、同市立川町八番地金子重平後援会前橋支部事務所内において、現金一、〇〇〇円を、

各供与し、

もつて選挙運動の法定期間前に選挙運動をなし、

第二、右候補者の選挙運動者でありかつ選挙人である瀬谷喜久三に対し同候補者のため投票ならびに投票取まとめ方の選挙運動を依頼し、その報酬等として意思を継続して、

(1)  昭和三五年一〇月三〇日頃、前記後援会事務所において、現金三、〇〇〇円を

(2)  同年一一月三日頃、前同所において、現金一、〇〇〇円を、

(3)  同月一〇日頃、同市立川町六番地附近道路上において現金一、〇〇〇円を、

各供与し、

第三、前同様右選挙に際し、前記候補者の選挙運動者でありかつまた選挙人であつた山崎勝茂に対し、右候補者のため投票ならびに投票取纒め方の選挙運動を依頼し、その報酬等として、同年一一月三日午後一時頃、前橋市立川町八番地金子重平後援会勢多前橋支部事務所において現金五、〇〇〇円を供与し、

たものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

被告人の判示第一の(一)および(二)のうち、選挙運動の期間前に選挙運動をなした点は公職選挙法第一二九条第二三九条第一号に、右のうち、(一)の各物品供与ならびに同(二)および判示第二、同第三、の各金銭供与の点は同法第二二一条第一項第一号(受供与者ごとにそれぞれ包括一罪)に、共謀の点は刑法第六〇条に、それぞれ該当し、そのうち判示第一の(一)および同(二)の選挙運動の期間前に選挙運動をなした点と各物品ならびに金銭を供与した点とはそれぞれ一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により重い判示第一の各物品ならびに各現金の供与罪の刑に従い、以上いずれも所定刑中懲役刑を選択し、右は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条本文第一〇条を適用し情状により最も重き判示第一の(二)の供与罪の刑に併合罪の加重をした刑期の範囲において被告人を懲役六月に処する。

以上によつて主文のとおり判決する。

(裁判官 藤本孝夫)

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